こんにちは!京王井の頭線浜田山駅近くにある本格的なフリーウェイト特化型ジム、パワーフィットスタジオZEROの濱田銀河です!東京都内でパワーリフティング練習もできるコスパの良いフィットネスジムにもなります。

みなさんは、筋力をはじめとしたパフォーマンスを向上させるために、筋肥大期をする必要があると聞いたことがあるのではないでしょうか?

教科書的には筋肥大期→筋力期という順番にトレーニングを期分けすることで筋力がより向上すると言われていますが、本当にそうなのでしょうか?

筋力と筋横断面積は比例する

筋トレをしている人は筋肉量と筋力は比例する(正の相関関係がある)と聞いたことが1度はあるのではないでしょうか?
これは、筋は大きいほど力が強いということを示しています。

詳しくいうと、筋肉量の増加が収縮性組織の増加(筋原線維の肥大)によって引き起こされた時にこの関係が認められるといわれています。

確かに国内のトップ選手は各階級でも筋肉量が非常に豊富でデカい選手が多い印象があります。
また、パワーリフティングやウエイトリフティングのような絶対筋力を競う競技が階級制競技であり、階級が上がるほど扱う重量が重い傾向があることを考えてみても

筋肉量と筋力が強い関係を持っていることは疑いもない事実でしょう。

筋肥大と筋力向上はイコールではない

筋肉量と筋力に関係があるのであれば、筋肥大は正義ということになりますね。
そうであれば、筋肥大の専門家であるボディービルダーは最強だというように考えられるかもしれません。

しかし、ボディービルダー、パワーリフター、ウエイトリフターを比較した研究では、ボディービルダーが大腿の断面積の推定値が高かったが、スクワットの筋力はパワーリフターとウエイトリフターの方が統計的に有意に高かったことが報告されています。

つまり、筋肥大だけではない何かが筋力の向上には重要になってくるわけです。

筋力の向上に必要な”何か”

筋力の向上に重要な何かは、一般的にいう神経筋の適応です。

では、その神経筋の適応はなんなのか?というとそれは

・運動単位の動員の増加
・発火頻度及び同期の増加
・神経の抑制メカニズムの低下

この神経筋の適応を促すために何をすれば良いのか、
それはより高い負荷でトレーニングを行うことです。 詳しくは以前の記事を確認して頂きたいです。

筋肥大は様々な負荷でも引き起こされますが、筋力の向上はより高負荷であることが重要になってくるわけです。

これは私の私見ですが、筋力向上を目的としたトレーニングにおいての筋肥大はトレーニングにより過負荷を与え、それから適切な回復がなされているかを示す指標であり、いわば副産物的なものだと捉えるべきなのではないかと考えています。

*このように考えることで、筋肥大を追い求めるがあまり筋力向上がなされないケースが減るのではないかと思います。

筋力向上のためのピリオダイゼーションで筋肥大期はいらない?

一般的にピリオダイゼーションを組む時には

筋肥大期→筋力期→ピーキング(テーパリング含む)

の流れで行われます。

各トレーニング期に設けられる期間は1ヶ月~3ヶ月程度になります。
このような短い期間で果たしてトレーニングを普段から行っているストレングスアスリートが筋肥大するのか?
というとそこまで大きな変化はないでしょう。

そうすると、この筋肥大期というのは要らないの?という話になってきます。
しかし、筆者を含めて多くのS&Cコーチやパワーリフティングコーチがこのような時期を設けます。
その意義は

①オーバーワークのマネジメント
②高い筋力発揮を繰り返すストレス耐性を作ること

です。

①のオーバーワークのマネジメントについて、非常に高負荷なトレーニングがトレーニング期間の大部分を占めると、オーバーワークの症状がみられやすくなることや、関節痛等の傷害を引き起こす可能性があることが示唆されています。
したがって、トレーニング負荷を意図的に落とす時期も重要になってくることが言えます。

②高い筋力発揮を繰り返すストレス耐性を作ることについて、筋肥大期ではやや負荷が落ちるにしても多くの場合は70~80%1RM程度の負荷を用いてトレーニングを行うと思います。これらは、日常生活やスポーツを考えると比較的により高負荷であり、その負荷を繰り返し身体に対してかけることでストレス耐性を高め、後の筋力向上を目的とした高負荷を扱うトレーニング期で質の高いトレーニングを継続することができる
ようになるでしょう。

これらを踏まえると、ピリオダイゼーションにおいては筋肥大期というよりボリューム期というのが適切な表現であり、多くのピリオダイゼーションの研究でポジティブな結果がもたらされていることを鑑みても、ボリューム期は筋力向上に十分に貢献すると考えられるでしょう。

番外編:筋肥大は必要ないのか?

これまでは、最大筋力のみを考えて話を進めてきましたが、この考えを直接的に活かせるのはパワーリフティング競技とウエイトリフティングなどの競技だけではないでしょうか?

ここからは筋肥大は必要ないのか?という問いについてバーベルスポーツ以外の競技(野球やサッカー、ラグビーなど)の文脈で少し考えてみましょう。

これを考えるのに重要な知識としては、ニュートンの運動の法則があります。

ニュートンの運動の法則

第1の法則(慣性の法則)…外から力が作用しない限り、物体は静止または等速運動を続ける。物体の慣性はその質量に比例する。つまり、物体の質量が大きいほど静止及び運動状態を変化させることは困難になる。

第2の法則(加速度)力(F)=質量(m)×加速度(a)
力が質量以上に増加すると、加速度は上昇する。質量が力以上に増加すると加速度は低下する。力と質量が同等に変化す.ると加速度は維持される。

筋肥大が起こると体重、つまり質量が大きくなります。

まず、第1の法則の観点からみると
筋肥大を起こすことによって特にラグビーやアメフトなどコンタクトの機会が多いスポーツにおいて同じ速度で選手同士がぶつかり合うのであれば、筋肥大がなされ質量が大きい個体の方が当たり負けをせず、突破力の高いパフォーマンスを発揮することが可能になると考えられるでしょう。

第2の法則の観点からみると
筋肉量に対して筋力が高いとスピードが速くなります。これは、ジャンプやスプリントなどはいかに強い力で素早い力発揮ができるかが重要になってくるので特にバレーやコート内で素早い切り返しが多いテニスやバドミントンなどの競技では特に重要になります。この場合、筋肥大により質量が大きくなりすぎるとスピードを出すための筋力に対する要求が高まるため、仮に筋肥大に対して筋力の向上の程度が小さいというようなことになるとスピードが落ち、パフォーマンスの低下をもたらすことが考えられます。

以上から

コンタクトの要素がある競技では、より筋肥大を引き起こし、スピードが落ちないような高い筋力を獲得する

コンタクトの要素がない競技では、いかに筋肥大を起こさずに、高い筋力を獲得する

というような目的でストレングストレーニングを行い、筋肥大と付き合っていくのが良いのではないでしょうか?

まとめ

今回は筋力の向上を目的としたトレーニングにおいて筋肥大期は必要か?
という視点で話していきました。

まとめると

・筋力と筋肥大は比例する
・筋肥大は筋力の向上に直接的ではない可能性がある
・筋力向上には神経筋の適応が重要である
・ボリューム期と捉えると良いのではないか
・その他のスポーツパフォーマンス向上には目的によって筋肥大と上手く付き合う必要がある。

になります!

ぜひみなさんの競技力向上に役立ててください!

参考文献

1. Hornsby, W. G., Gentles, J. A., Haff, G. G., Stone, M. H., Buckner, S. L., Dankel, S. J., Bell, Z. W., Abe, T., & Loenneke, J. P. (2019). 筋肥大が筋力とスポーツパフォーマンスに及ぼす影響とは? [What is the Impact of Muscle Hypertrophy on Strength and Sport Performance?]. NSCAジャパン機関誌, 26(10), 57–70. Retrieved from https://www.nsca-japan.or.jp/journal/26_10_57-70.pdf

2. Young, W., Talpey, S., Bartlett, R., Lewis, M., Mundy, S., Smyth, A., & Welsh, T. (2020). 筋量の増加:どの程度がパフォーマンスに最適なのか? [Development of Muscle Mass: How Much Is Optimum for Performance?]. NSCAジャパン機関誌, 27(1), 45–48. Retrieved from https://www.nsca-japan.or.jp/journal/27_1_45-48.pdf